弁護士法人さくらさく法律事務所ブログBlog
台風被害の余波-土地の工作物等の占有者及び所有者の責任(民法717条)
弁護士の櫻田です。
先月の台風15号の被害は甚大でしたね。
交通機関が麻痺したため、当日の昼過ぎまで当事務所も営業できなかったことに加え、個人的にも自宅や車に相当の損害を受けました。
市原市のゴルフ練習場施設倒壊の近隣住宅への被害も大きなニュースになっていますが、私のところにも、台風で家屋の一部が周辺へ飛散したことの損害賠償に関する相談が複数ありました。
こうしたケースでは、民法717条1項の問題になることが多いです。
民法717条1項を引用してみましょう。
「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」
「土地の工作物」としては、建物が代表的なものです。「瑕疵」とは通常有すべき安全性を欠いていることをいいます。要するに、建物等の設置や保存(管理)をする上で、安全性を欠くようなことがあり、これが原因で他人に損害が生じた場合には、その賠償をしなければならないというものです。
賠償をする主体は建物等の占有者(実際の利用者)ですが、占有者が必要な予防義務を果たしたときは、所有者が責任を負うことになります。所有者には免責事由がなく、その責任は無過失責任です。
この規定だけみると、建物等の設置や保存に安全性を欠いていれば、少なくともその所有者は賠償責任を負うことになります。
しかし、これでは、先の台風15号のように天災ともいえる事態の場合には、建物等の所有者にはやや酷なような気もします。
ただ、民法717条1項によっても、建物等に瑕疵があることが要件となるので、設置や保存をきちんとしていたにもかかわらず、災害の規模が想定外であったということなどが立証できれば、賠償責任を負わない可能性もあります。
また、因果関係の有無も問題となるでしょう。被害者としては、この建物等からこの部品が飛散して自分の所有物を損傷したというように、加害物と被害物、その経緯などを特定しなければなりません。これは意外に難しいです。実際、先の台風で私の車のリアガラスが全損しましたが、どこから何が飛んできたガラスが破損したかはまったく分かりませんでした(誰かに賠償請求する気すら起きませんでした)。
あとは、建物や車の保険もあるので、その利用を検討した方がいい場合もあるでしょうね。
さて、今週末には、台風19号がまた関東に接近する予報が出ています。
被害を受けない対策も必要ですが、建物等の占有者・所有者であれば、他人に加害を与えない対策も併せて行う必要もあると思います。
ともあれ、大きな被害が出ないことを祈ります。