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法律コラム

訴訟における釈明

弁護士の櫻田です。

 

今回は、久しぶりに教室的に訴訟における「釈明」のお話を。

 

民事訴訟において、釈明とは、裁判所が、当事者に対し、訴訟関係を明瞭にするため、事実上又は法律上の事項に関する問いを発し又は立証を促すことをいいます。

要するに、当事者の主張や立証に不明瞭な点がある場合、事件を審理・判断をする裁判所としては、主張や立証を明確に分かりやすくするよう当事者に問い質すというものです。

 

語彙として正確にいうと、釈明をするのは当事者ですので、裁判所の行為としては、「釈明」ではなく、釈明を求めるという意味で「求釈明」という意味です。

ただ、実務上、単に「釈明」という場合は、この「求釈明」の意味で使用されることが多いです。

 

さて、代理人として訴訟手続をしていると、相手方から釈明を求められたり、逆に、相手方に釈明を求めたりすることがあります。

 

しかし、釈明を求めるのは、当事者ではなく、裁判所です。

なので、代理人としては、裁判所が釈明をするように求めるということになります。

 

この代理人が求める釈明は、ときに無茶な要求になることもあります。

例えば、主張立証責任を負う側が、有効な主張立証をすることができない場合などに、主張立証の端緒を得るため、相手方しか知り得ない事情等を引き出そうとすることがあります。

いやいや、そういうことは相手方に主張立証させるのではなく、そちらが調査検討して主張立証すべきことでしょう。

 

とはいえ、訴訟の実務では、主張立証責任の分担が厳格に適用されているとはいえず、裁判所としては、事実認定のために有益であれば、主張立証責任とは関係がなく、事情を知る当事者に釈明させることが多々あります。

 

ですので、私としては、相手方代理人から直接の求釈明には釈明を留保することもあるのですが、法廷で裁判所から釈明を求められると、半ば仕方がなく、事情等を調査して釈明をすることもあります。

 

このように、訴訟において釈明はしばしばなされるものですが、法的には、裁判所の釈明に対して異議を述べることができます(民事訴訟法150条)。また、裁判所としても、訴訟進行上、適切に釈明をすることが求められるので、権限をもって当事者に説明させるなどの釈明処分をすることもできます(民事訴訟法151条)。

 

今回は以上です。