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法律コラム

訴訟告知

弁護士の櫻田です。

 

もう10月ですね。あっという間に、今年もあと3ヶ月。

 

さて、今回は、最近相談を受けた案件の中から、「訴訟告知」の話を。

民事訴訟の手続的な話なので、なかなか馴染みは薄いかもしれません。

 

訴訟告知とは、訴訟係属中に、その当事者が、補助参加等をなし得る第三者に対し、その訴訟係属の事実を通知することです(民事訴訟法531項)。

 

この制度の趣旨は、訴訟告知をされた人(被告知者)に訴訟に参加する機会を与えること、訴訟告知をした人(告知者)が敗訴した場合には、被告知者が訴訟に参加しなかったとしても、被告知者に参加的効力を及ぼすことができること(民事訴訟法534項)にあります。

 

典型的には以下のケースが想定されます。

 

<ケース①>

保証債務履行請求訴訟で保証人が敗訴した場合、保証人は主債務者に求償することが考えられますが、主債務者が主債務の存在を否定して求償を拒まれ、二重に敗訴するおそれがあります。

そこで、この場合、保証人は、主債務者に訴訟告知をします。すると、保証人は敗訴しても、参加的効力により、主債務者は主債務の存在を否定することができなくなり、主債務者への求償をすることができます。

 

<ケース②>

売買契約の買主が売主以外の第三者から所有権に基づく返還請求訴訟を提起されて敗訴した場合、買主は売主に損害賠償請求をすることが考えられますが、売主が自分に所有権があったと主張して損害賠償義務を争われ、二重に敗訴するおそれがあります。

そこで、この場合、買主は、売主に訴訟告知をします。すると、買主は敗訴しても、参加的効力により、売主は自分に所有権があったと主張することができなくなります。

 

要は、告知者の二重敗訴のリスクを回避する点に狙いがあります。

 

訴訟告知には法定の方式がありますが、重要なのは訴訟告知の効果です。

 

被告知者は、訴訟への参加を強制されるわけではありませんが、参加しなかった場合でも、参加することができるときに参加したものとみなされ、被告知者に「参加的効力」(民事訴訟法46条)が生じます(民事訴訟法534項)。

 

参加的効力とは、判決が確定した場合に、被告知者が告知者に対して判決が不当であると主張することを禁じる効力であり、判決理由中の判断についても生じます。

上記のケース①だと主債務者が主債務の存在を否定することが禁じられ,ケース②だと売主が自分に所有権があるとの主張が禁じられることになります。

 

被告知者に参加的効力が生じるには、被告知者が補助参加する利益を有していること、被告知者が補助参加する
ことが期待し得ること、告知者が敗訴した場合に被告知者が告知者に対し求償義務や損害賠償義務を負う実体的な関係があることが要件となります。

 

なお、訴訟告知には、裁判上の催告と同様の効果(民法153条)が認められ、訴訟終了後6ヶ月以内に訴訟提起等をすれば、時効中断の効力が生じます。

 

私が受けた相談は、被告知者の関係者の方からでした。

上記のように、訴訟告知された場合には、訴訟に参加しなくても参加的効力が及びますので、補助参加をするかどうかをまず検討する必要があります。

制度も複雑で一般には分かりにくいかと思いますので、訴訟告知を受けた場合には、早急に弁護士に相談した方がいいでしょう。