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法律コラム

和解の勧試

弁護士の櫻田です。

 

今回は和解の勧試の話です。

 

司法統計によると、平成27年度に、全地方裁判所で、終局した訴訟が約14万件。

内訳は、判決によるものが約6万件、和解によるものが約5万件、その他が約3万件。

訴訟のうち、約43%は判決で終結し、約36%が和解で終結した計算になります。

 

私の印象としては、和解による終結がやや少ないかなという印象ですが、判決による終結の中でも、被告欠席による調書判決なども相当数あるでしょうから、実質的に審理がなされた案件に限定すると、和解による終結の方が多いと思います。

 

実際に、審理期間別のデータをみると、審理期間が6ヶ月~1年間で終結した約29000件のうち、判決による終結が約9300件、和解による終結が約16000件ですから、ある程度実質的な審理がなされた場合は、和解による終結が圧倒的に多いことになります。

 

さて、訴訟代理人を多く受任する私の印象ですが、裁判官はとても和解をさせたがります。法律用語では、これを「和解の勧試」(民事訴訟法89条)といいます。

和解で終結すると、当事者が合意した内容を和解調書にまとめれば、事件は終結します。和解条項も、あくまで当事者が合意した内容がベースになり、合意に至った経緯等は記載されません。

他方、判決になると、特に、争点が多く、その判断も複雑になる場合は、証拠から認定した事実や、争点に対する判断、その理由等を詳細に文章化しなければなりません。私も、司法修習での起案の経験しかありませんが、判決を書くことはけっこう大変です。

まして、一人の裁判官が抱える案件はとても多く、すべてについて詳細な判決を書かなければならないとなると、本当に時間がないと思います。

なので、裁判官としては、和解で終結してもらえればありがたいということになります。

 

当事者としても、案件によっては、内容が妥当なものであれば、和解で終結した方が、どういう判断がなされるか分からない判決で終結するよりも、リスクが回避でき、利に適う場合が多いです。

 

一方で、依頼者の意向により、和解には応じられないこともあり、そうなると、裁判官に判決を下してもらうしかないこともまた多いです。

しかし、この場合でも、裁判官の中には、強引に和解に誘導しようとする方がいます。

和解は受けられないと伝えているのに、和解の検討をしないと審理を進めないような指揮をされることも稀にあります。

上記のような裁判官側の事情は分かるのですが、当事者の意向を汲んで、もう少しスマートな訴訟指揮をしていただければと思う限りです。

 

当然ですが、和解の勧試に強制力などありませんから、和解をするかどうかは、当事者の意向をよく確認することが肝要です。勧試のプレッシャーに負けてはいけません。