弁護士法人さくらさく法律事務所ブログBlog
木の枝と根
弁護士の櫻田です。
GWはいかがお過ごしでしたか?日の並びもよく、報道では、旅行などに行かれる方が多かったようです。
私は、結局、娯楽での外出はしませんでした。すべて雑事と休養に充てました。休めたのはいいですが、ニュースなどで、レジャーや交通渋滞などの情報を騒がしく流されると、どこへも出かけない自分が寂しくもなりました。
さて、最近の相談の中で、私有地にある木の枝が公道に出て通行を妨げているが、その私有地の関係者としてはどうすればいいのか?という話がありました。
この話とは直接関係がないのですが、このとき、ふと思い出したのが、民法233条で定められている「竹木の枝の切除及び根の切取り」の規定でした。
では、とりあえず、民法233条を引用しましょう。
1項「隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。」
2項「隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。」
同条は、いわゆる相隣関係の規律で、隣り合う土地では、竹や木の枝や根が生育して、お互いの境界線を越えて侵入してしまうことがあるため、一定のルールが設けられたものです。
1項では、境界線を越えてきた枝は、その所有者に切ることを「請求できる」とされています。
まぁ、当然のことですね。一般的な日常感覚通りのことかと思います。仮に、竹木の所有者がその枝を切らない場合は、第三者に切ってもらうよう裁判所に請求する(費用負担は竹木の所有者)ことも可能だと考えられています(民法414条2項)。
面白いのは、2項ですね。越境してきたのが根であれば、「自分で切り取ることができる」のです。
枝との違いは、根の場合、地中にあるので、越境してきた根はその隣地の一部になったと考えられるところに由来するのでしょう。
しかし、この2項があるとはいえ、なかなか自分で切ることには抵抗があるでしょう。
それに、わずかしか越境していないのに、根を切ってしまったことで、その竹木自体が枯れてしまったというケースも起こり得ると思います。この場合、行き過ぎた行為ということで、権利の濫用にあたり、正当な権利行使と評価されないこともあるでしょう。そうであれば、竹木の所有者から損害賠償請求もされかねません。
ともあれ、2項があるからといって、即座に根を切ることは控えて、まずは、竹木の所有者に状況を説明して、自分に損害が出ない形で所有者に対応をしてもらう方がよろしいかと思います。
この規定は、法律の資格試験ではまれに出題されることもあるので、ご存じの方も多いかと思いますが、今まで現実の案件でこの相談を受けたことはないですし、今後もまずないでしょうね。
では。